世界中でアイデア広がるサーキュラーエコノミーの未来とは?

加藤佑さんが総会記念講演会に登壇

WE21ジャパンは5月28日(土)、第23回通常総会記念講演会を主催し、 社会課題の解決に向けた情報を発信するWebメディア等を運営する、ハーチ株式会社代表の加藤佑さんが登壇した。 講演のテーマはサーキュラーエコノミー(資源循環型社会)。 この実現に向け、ヨーロッパや日本国内の各都市では数々のクリエイティブなアイデアが実践されている。 加藤さんは、サーキュラーエコノミーの推進活動をしながら「一人一人の取り組みがサーキュラーエコノミーの実現には大事」と話す。

■オランダ・アムステルダムでのクリエイティブな取り組み
 オランダのアムステルダムは2050年までに100%サーキュラーエコノミーに移行することを目指し、企業や自治体が取り組みを行っている。 その取り組み例としては、魚の頭や野菜の皮など通常は捨ててしまう部位を料理に使用するレストランや、 ジーンズを買わずに「借りる」サブスクリプションのサービス、地域住民が使用できる公共のコンポストなど様々。

中でも、観光とサーキュラーエコノミーを掛け合わせた、運河で浮いているプラスチックごみを拾うツアーも人気が高い。 拾われたごみは連携している企業のもとで家具に生まれ変わるという。 加藤さんは取材の様子を振り返り「観光公害ともいわれるように、通常観光客は街を汚すものとされている。発想の逆転が面白い」と話す。

■日本でも実践されている様々なアイデア
 日本でも様々なアイデアが実践されている。 沖縄県ではサトウキビの搾りかすで「かりゆしウェア」を作り、観光客へ貸出すサービスが開始されている。 滋賀県の洋食器メーカーでは食器のサブスクリプションが開始。 また家庭でできるコンポストの推進と、その堆肥を農家の方に渡す循環サービスを始める企業も生まれている。

 こうした新しい取り組みがなされる一方、加藤さんは「サーキュラーエコノミーの価値観は昔から日本の中に根付いてきた」という。 江戸時代にまで遡れば、紙屑拾いや古着屋などの静脈産業の人々が活躍し、壊れた日用品を直すための多様な職業が存在していた。 人々が一般的に着ていた着物は着付けでのサイズ調整が可能なため体型が変わっても長く着用でき、古くなったら竈の燃料にしてその灰は肥料になる。 それ一つだけで循環が成り立っており、サーキュラーデザインとしても高く評価されている。

■サーキュラーエコノミーの世の中とは
加藤さんはサーキュラーエコノミーの取り組みについて、環境の負荷を減らすことだけが目的でないと考える。 今の経済偏重の世の中は競争社会を当たり前にし、一人一人の長時間労働が前提として経済が循環している。 ひとつものを循環させて長く使い、それを前提として企業が経済活動をするサーキュラーエコノミーの考え方は環境だけでなく 社会、経済のバランスを整え「ウェルビーイング(長期的な幸福)」の実現のために大事なものと強調する。

 現在の世の中の、持続可能な社会への転換が年々重要視されるようになっている。 加藤さんは「僕たち一人一人が、消費者や企業など様々な立場を超えて行動するパワーは大きい。 そのことを信じれば、サーキュラーエコノミーの社会も実現することができる。」と発信を続ける。